マーケティングの基礎知識

マーケティングとは

マーケティングとは、商品やサービスが売れるような仕組み作りのことをいいます。市場調査からニーズの分析、商品開発、販売、広告、検証評価まで、ビジネスのあらゆる場面において売り上げが上がるような仕組み作りを目指します。

日本マーケティング協会では、マーケティングを以下のように定義しています。

マーケティングとは、企業および他の組織1)がグローバルな視野2)に立ち、顧客3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動4)である。

1)教育・医療・行政などの機関、団体などを含む。
2)国内外の社会、文化、自然環境の重視。
3)一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む。
4)組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう。

引用元:公益社団法人日本マーケティング協会(https://www.jma2-jp.org/jma/aboutjma)

重要なのは、「市場創造のための総合的活動」であるという点です。マーケティングは営業活動や広告のような、商品を売るための1つの施策ではありません。誰がどのような価値を求め、どうして欲しているのかを明確にした上で、そのターゲットが商品を購入するまでの筋道を作ることこそがマーケティングなのです。【売る】のではなく【売れる】ような状態を整備することがマーケティングの本質といえます。

マーケティングはどんな仕事なのか
マーケティングの仕事は製品やサービスが売れる仕組みを作ること

マーケティングの仕事は商品やサービスが売れる仕組みを作ることです。商品が売れる仕組みを作るため、以下のような施策がとられます。

・見込み客のペルソナを明確化する。
・市長調査を行い、競合や環境を分析する。
・売れる仕組みと方法を選定し、実行戦略を立てる。
・施策を実行し、評価を行う。
・PR・広報活動を行う。

これらの施策がマーケティング担当者の業務となります。一口にマーケティング業務と言ってもその内容は広範囲にわたるため、担当者の間で適切な作業分担が必要です。

また、マーケティングと混同されやすい言葉に「営業」があります。営業の業務は商品やサービスを直接顧客に売ることです。マーケティングは販売戦略を立てることこそありますが、実際に顧客に商品を売る営業活動とは別物です。営業が顧客を対象として商品を売るのに対し、マーケティングは市場を対象とし、そこで商品が売れるような仕組みを作ることを主眼としています。

ペルソナを明確化

ペルソナとは、商品やサービスを利用する典型的な人物像のことです。架空のユーザーを具体的に設定することで、企画から販売までのマーケティング戦略を一貫させることができます。ペルソナはユーザー視線で商品やサービスを開発する際の基礎となるもので、ライフスタイルにより寄り添った商品を作ることを可能にさせてくれます。また、具体的な人物像を共有することで社員の間に共通認識が生まれるため、大規模な施策を実施する際もスムーズに事が運びます。

ペルソナと似た言葉に、「ターゲット」があります。ペルソナとターゲットの違いは、人物設定の細かさです。ターゲットは年齢や職業、性別、住んでいる地域など、大きな属性で人物像を設定します。対してペルソナは、性格や趣味、家族構成、日常の過ごし方、買い物をする場所、インターネットの利用頻度、好きなアプリやSNS、仕事や人生における目標など、実在している人間らしくなるように細かい点まで設定します。

ライフスタイルが多様化する現代においては、ペルソナを明確化した上で商品開発を行うこと求められています。実在の人間に近づけるために、ペルソナを設定する際には具体的な数字を盛り込んだり、SNSなどでサンプルを見つけ調査したりすることが欠かせません。自分たちの希望や先入観にとらわれず、本当に存在するような人物像を作ることが大切です。

競合・環境分析

マーケティングは市場の状況を読みながら、自社の商品やサービスが売れるような環境を作り上げます。そのため、市場や競合企業の分析は欠かせないプロセスの一つです。競合や市場環境の分析をすることで、自社の置かれている立ち位置や、他社と比べての強みや弱みを知ることができます。具体的な実行戦略は、この分析を経た後に立てられます。

自社の置かれている立ち位置は、市場の状況に応じて変化する相対的なものです。絶対にこうすればよいという答えがあるわけではありません。そのため常に市場を分析し、自分の会社がどのような状況に置かれているのか、今どうすれば商品を売ることができるのかを見極めていく必要があります。

市場や競合の分析をおこなう際には、フレームワークがよく用いられます。代表的なフレームワークとして、3C分析、PEST分析、5フォース分析などがあります。これらのフレームワークを用いることで、外部環境を分析し、自社の置かれている立ち位置を明確化することができます。

売れる仕組みと方法を選定

環境の分析を行った後、どのように利益を上げるかという実行戦略が立てられます。実行戦略を立てる際、最もシンプルな方法は5W1Hから考えることです。何を(What)、なぜ(Why)、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、どのように(How)もしくはいくらで(How much)売れるのか、といったような観点から商品のコンセプトを固め、どのようにプロモーションしていくかを見極めます。

実行戦略は市場分析を踏まえた上で行われます。市場分析をしないで戦略を立ててしまうと、「売りたい」という能動的な気持ちが強くなり、自社の立ち位置についての認識やユーザーの視点が欠けてしまいます。マーケティングはあくまでも売れる仕組みを作ることであって、売りたいという目標をかかげることではありません。綿密な客観的分析によって商品が売れるような状態を作り上げましょう。

実行戦略を立てる際にも、役立つフレームワークがあります。代表的なものとして、マーケティングミックスの4P分析などがあります。これら主なフレームワークについては後に解説します。

試作実行と評価

実行戦略に則って施策を実行します。その後、当初の目標に対して本当に効果があったのかを評価する必要があります。評価の基準は分析を行い、戦略を立てる段階で、同時に定めておくことが大切です。成功イメージを目標として設定し、それを達成するための鍵となる要素を洗い出し、それぞれに対して評価項目を立てます。施策を適切に評価することで、失敗した場合は原因を即座に解明できますし、成功した場合もノウハウやマニュアルとして活用することができるのです。

目標設定や効果測定のためのフレームワークとしては、SMARTの法則を用いたゴール設定や、KGI・KSF・KPIなどの指標があります。

PRと広報

PRとは「パブリックリレーションズ(Public Relations)」の略で、企業が社員や顧客、メディアやステークホルダーなど、一般大衆に対してよい関係を作り上げるようなコミュニケーション活動のことをいいます。広報も本来は同じ意味を持つ言葉でしたが、現在では一方的な情報発信の意味合いが強いです。どちらの言葉も単なるプロモーションとは違い、社会に対してどう働きかけるのかが活動の主眼となります。

マーケティングの一環とされることが多いPR活動ですが、この二つは原理がまったく違っています。マーケティングは市場を分析し、戦略を立てて商品が売れるような状況を作り上げます。対してPRは積極的に社会と関わり、市場を変化させる力を持っています。PR活動では人々の共感を得たり、感情を揺すぶったりすることで、企業に対する安心感や信頼感を覚えてもらうことが重要です。マーケティングが市場の流れに乗る活動であるとすれば、PRは市場に流れを作り出す活動であるといえます。

インバウンド・アウトバンド
インバウンド・アウトバウンドの違い※メリット・デメリット

インバウンドマーケティングとは、買い手にとって役立つコンテンツを発信することで、商品やサービスに買い手が辿りつけるような仕組みを作るマーケティング手法です。潜在顧客が欲している情報を正確にキャッチし、適切なコンテンツを提供することで自発的に見つけてもらうことが特徴です。

対してアウトバウンドマーケティングとは、広告やTVCM、展示会などのイベントを通して不特定多数の人に情報を届けるマーケティング手法です。多くの人々に一斉に情報を届けるのが特徴で、買い手を情報で引き込むインバウンドマーケティングに対し、買い手へ情報を届けるようなアプローチをとります。

インバウンドマーケティングのメリットとして挙げられるのは、

・ターゲットを絞り込みピンポイントで狙える
・ターゲットが明確なのでリピート率が高く、信頼関係が築ける
・運用コストが低い
・蓄積したコンテンツが資産になる

などがあります。インバウンドマーケティングはペルソナ分析などを通して、徹底的にユーザー目線でコンテンツを作ります。そのためコンテンツを利用したユーザーは、自分の求めていた情報がぴったり得られたことに感動し、興味を深めます。重要なのは、そのコンテンツがユーザー自らの力で見つけ出したものだということです。自発的に見つけた情報だからこそ深く興味を抱き、ひいてはリピーターとしてファン化する可能性が高いのです。

一方、インバウンドマーケティングのデメリットとしては、

・費用対効果が予測しにくい
・特定の層に限られる
・長期的に運用する必要がある

などが挙げられるでしょう。インバウンドマーケティングは買い手の自発性を頼みにしているため、費用をかければ大きな効果が出るといった単純な関係にはありません。また、ターゲットを絞り込む以上顧客層は限られ、大量の注文が入ることは望めないでしょう。加えてCMや広告のように一目で宣伝効果が得られる訳ではないため、成果が出るまで時間がかかるのもデメリットの一つです。

それでは、アウトバウンドマーケティングのメリットはどのようなものでしょうか。代表的なものを挙げると、

・知名度が上がる
・不特定多数にアピールできる
・すぐに行動へ移りやすい

アウトバウンドマーケティングの最大の特徴は、不特定多数にアピールすることができるということです。潜在顧客の興味をひきつける効果は非常に大きく、まったく興味を持っていなかった人々へも情報を届け、商品やサービスについて知ってもらうきっかけとなります。加えて、買い手のニーズやタイミングが一致していた場合には、CMや広告は高い即効性を持ちます。多くの選択肢から選ぶのは心理的に負担であるため、欲しかったものがピンポイントで提示されると、即座に購入に至る可能性が高いからです。

一方、アウトバウンドマーケティングのデメリットは、

・興味のないユーザーからは煙たがられる
・コストが高い
・潜在顧客と見込み客の選別が実質的に不可能

などが典型的なものです。一番のデメリットは、不特定多数にアピールしなくてはならないため、どうしてもコストが高くなるということです。また、ターゲットが「40代男性」「20代女性」など、大まかな属性でしか捉えられないため、興味のある層にもない層にも同じようなメッセージしか伝えられないのも難点になります。何より、興味がまったくないユーザーからは煙たがられてしまうため、中途半端な施策ではまったく効果が上がらないこともあります。アウトバウンドマーケティングで成功するには、まとまった資金と綿密な戦略がなくてはならないでしょう。

インバウンドマーケティングの流れ※1.潜在顧客に見つけてもらう>2.見込み客へと育成する>3.顧客化する>4.ファン化する

誰もがインターネットで欲しい情報を検索できる時代において、インバウンドマーケティングはますます重要視されています。インバウンドマーケティングの大まかな流れは以下のようになります。

1. 潜在顧客にコンテンツを見つけてもらう
2. 見込み客へと育成する
3. 見込み客を顧客化する
4. 顧客が企業やコンテンツのファンになる

【1.】の過程では、潜在顧客に見つけてもらうことが目指されます。ブログやSNSで良質なコンテンツを作成し、繰り返し来てもらえるよう定期的に発信し続けます。加えて、SEO対策などを行い、ターゲット層に情報が届くよう施策をとります。

【2.】では、コンテンツ発信によって信頼を得た潜在顧客を、連絡先などの個人情報を登録する見込み客へと育成していきます。メルマガの登録などによってより詳しい情報を発信し、セミナーの参加などさらなるサービスを提供します。ここで見込み客は商品やサービスの購入を検討する段階に入ります。

【3.】の過程で、購買を進めるメールやプラン紹介などを積極的に行い、見込み客を顧客化します。無料体験やサービス比較、導入事例などを通して商品についてより深く知ってもらい、買いたいという気持ちを高めます。顧客は購入するかどうかという意志決定の段階にあります。

【4.】で行うことは、購入に踏み切った顧客に対するアフターサービスが中心になります。顧客によりよく満足してもらい、口コミやSNSで拡散してくれるようなファンになってもらうことを目指します。この段階ではカスタマーサポートの他、コミュニティを充実させることなども重要な施策です。

インバウンドマーケティングの集客
コンテンツマーケティング※コンテンツマーケティングとはユーザーに価値あるコンテンツを提供して、購買行動へ結びつけるマーケティング手法

インバウンドマーケティングの要となる集客方法はコンテンツマーケティングです。コンテンツマーケティングとは、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供することで興味をひき、購買や会員登録などのアクションへと誘うマーケティング手法のことです。検索などを通して潜在顧客に見つけてもらい、最終的にはコンテンツを通じて企業のファンとなってもらうことが目標となります。

コンテンツマーケティングでは、ユーザーが知りたいと思う情報を発信する必要があります。ユーザーのニーズをつかむためには、ペルソナ設定やバイヤージャーニーなどのフレームワークを活用して分析し、今求められている価値や情報は何かを見極め、それを提供するコンテンツを作ることが重要です。また、インターネット検索でコンテンツにたどり着いてもらうためにはSEO対策なども必須です。これらの分析や対策を行った上で、徹底的にユーザー目線に立ったコンテンツを作り上げることがマーケティングの肝となります。

主なコンテンツの種類

代表的なコンテンツの種類として、以下のものがあります。

・テキストコンテンツ:オウンドメディア、SNS、メールマガジン、広報誌、ホワイトペーパーなど。
・写真:オウンドメディア、SNSなど。
・動画・オンラインセミナー:オウンドメディア、動画サイト、SNSなど。
・オフラインセミナー・イベント:対面形式のセミナー、申込制のイベントなど。

上に挙げたコンテンツの内、どれか一つを展開すればよいというわけではありません。それぞれのコンテンツにはそれぞれの持ち味があります。テキストであれば詳しさ、写真であれば目立ちやすさ、動画であればわかりやすさなどです。そのため、コンテンツの内容によってふさわしい形式を用いることが重要です。様々な形式を用いることで、コンテンツに深みと面白さを与え、より魅力的なものを作り上げることができます。

戦略を立てるフレームワーク
ユーザー分析をすることの重要性

ユーザー分析はマーケティング戦略を立てる際に最も重要な指針となります。マーケティングは徹底してユーザー視点に立つことによって、ニーズを汲み取り、商品やサービスが売れる仕組みを作り上げます。ユーザー分析を行わなければどんな施策をとったとしても企業側からの押しつけになってしまい、ユーザーの気持ちを汲んだものとはなりません。優れたフレームワークを用いた分析を行っても、ユーザー視点に立つという意識がなければ、効果を発揮しないでしょう。そのためユーザー分析は、マーケティング戦略を立てる際の大前提となるものなのです。

ユーザー分析は、ペルソナ分析やバイヤージャーニー分析などを通して行います。これらのフレームを用いてターゲットの人物像を明確化し、購入に至るまでの過程を分析することで、マーケティング戦略に活かしていきます。

ペルソナ分析

ペルソナ分析では、商品やサービスを利用するユーザーの典型的な人物像を設定します。年齢や家族構成、職業、住んでいる地域などの基本的な情報の他、ライフスタイルや価値観、趣味や癖、ネットやSNSとの関わり方まで、細かく項目を設けて具体的に設定します。実在の人間らしく人物像を設定することで、ユーザー像が明確化し、よりユーザー視点に立った商品・サービスの開発が可能になります。

設定するペルソナは一人だけとは限りません。ターゲットが複数いる場合、1つの家族を典型的なユーザーとして設定したい(例:自家用車など)場合などは、複数のペルソナを作成した方がマーケティングに役立てられるでしょう。

バイヤージャーニー

バイヤージャーニーは、顧客の行動を旅(Journey)に見立てて分析する手法です。顧客が商品を見つけ、検討し、購入に至るまでの行動をステップ化して分析します。バイヤージャーニー分析では、顧客の行動を認識ステップ、検討ステップ、決定ステップの3段階に分けて考え、ステップ毎に顧客が何を求めるか、どう行動するか、どんな思い込みがありどんな気づきを得るか、など予想される行動を具体的に設定します。

重要なのは、顧客の行動を点ではなく線でとらえ、顧客の心理や感情、思考の変化をイメージすることです。ペルソナ分析が人物像の設定だとすれば、バイヤージャーニー分析はその人物が購入に向けていかに行動するかのイメージ設定であるといえます。

事業分析の3C※市場・顧客Customer・競合Competitor・自社Company

3C分析は、自社を取り巻く経営環境を把握するためのフレームワークです。3C分析では、市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という3つの要素に着目し、自社の立ち位置を明確にします。それぞれの要素では主に以下のことが分析されます。

・Customer:市場規模や成長性、顧客のニーズ、消費行動・購買行動の傾向
・Competitor:競合企業のシェア率や特徴、業界内でのポジション、新規参入や代替品の可能性
・Company:自社の強みや弱み、理念やビジョン、事業の現状、割けるリソースや資本力

3C分析の要は「市場・顧客→競合→自社」の順に分析していくことです。マーケティングは顧客目線で戦略を立てるため、顧客のニーズが明確でければ競合や自社の分析をしても成果を得られないからです。市場調査によってニーズを把握し、競合の活動を分析した上で、自社がその市場で活かせる強みを見つけ出していきましょう。

3C分析では客観的な事実を集めて分析することが重要です。必要であれば自社でアンケートや取材などの調査を行い、できる限り多くの事実を収集します。手軽に見つけられる情報だけで済ませるのでは、自社にとって重大な意味を持つ事実は得られません。本当に欲しい事実を自分の足で集めることで、分析は明確になり、自社の立場や方針もはっきりするのです。

外部環境分析 PEST

PEST分析は、経営に関わる外部環境を分析するためのフレームワークです。政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)という4つの大きな要素から俯瞰的に自社の外部環境を整理します。主に以下のことが分析されます。

・Politics:法律や条令、税制改正、選挙や政権の交代
・Economy:景気動向、経済状況、成長率、為替や株価の推移
・Society:流行や世論、文化、教育、宗教、言語、少子化、人口動態、世帯構成、ライフスタイル
・Technology:インフラ、イノベーション、新技術、技術開発、特許

PEST分析を通して、将来起こるリスクやどのように市場へ参入すべきかを判断することができます。自社のチャンスとリスクを見極めることがPEST分析の主眼です。このような特徴を持つPEST分析は、国内情勢の分析のみならず海外へ進出する際にも用いられるフレームワークです。当該国の政治や文化、経済状況や技術開発状況を知ることで、自社が参入するチャンスとリスクを見極めることが可能になります。

5フォース

5フォース分析は、自社にとって脅威(Force)となる要素を分析するためのフレームワークです。自社を取り巻く環境を5つに分類し、それぞれの力がビジネスにとってどれくらい脅威になるかを分析し、対処策を講じる材料を用意します。5つの要素とは、競合他社、代替品、新規参入、買い手、売り手です。5つの要素で分析される主な事柄は以下の通りです。

・競合他社:競合の数、業界内での競合のポジションやシェア率
・代替品:技術革新による市場の統合、異業種企業の競合化(例:カメラつきスマートフォンがカメラの代替品となる、など)
・新規参入:新規参入のしやすさ、新規参入者が業界に与える影響
・買い手:買い手との関係、価格設定、他社や代替品への顧客流出、消費抑制、消費行動の変化
・売り手:原材料の供給業者や卸業者との関係、価格の引き上げや供給停止、価格決定権

5フォース分析が対象とするのは、自社の外部にあり、かつ収益に直結するような脅威です。分析に際しては収益が上下するか否かという点に注目し、自社にとって脅威となるかを見極めるのがよいでしょう。収益を左右する最大の要因は、市場内で競争が激しいか否かという点です。5フォース分析では市場の競争の激しさを分析し、収益構造を明らかにすることで、競争における自社の優位性を見出すことが主眼となります。

SWOT

SWOT分析は、外部要因から機会と脅威を捉え、内部要因から強みと弱みを見出すことで、自社のマーケティング戦略の方向性を探るフレームワークです。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)という4つの要素を分析し、それらを軸に効果的な戦略を模索していきます。分析されるのは、次のような事柄です。

・Strength:自社の強みは何か、目標達成に貢献する自社の要素は何か
・Weakness:自社の弱みは何か、目標達成を阻害する自社の要素は何か
・Opportunity:市場での機会はあるか、目標達成に貢献する外部の条件は何か
・Threat:市場での脅威はあるか、目標達成を阻害する外部の条件は何か

実行戦略を立てるには、各要素を組み合わせて考えるのがよいでしょう。例えば強みと機会を組み合わせて考えることで、自社の強みを活かした市場への参入方法を模索することができます。このように、各要素を組み合わせて戦略を立てる方法を、「クロスSWOT分析」と呼びます。クロスSWOT分析を行うことで、マーケティング戦略や具体的な実行戦略を策定することができます。

ポジショニングマップ
自社商品・サービスに独自性があることをイメージさせること

ポジショニングマップの目的は、自社の商品やサービスが持つ独自性を、視覚的にイメージしやすい形で提示することです。ポジショニングマップに使われるのは、縦軸と横軸からなる二次元の座標です。評価軸となる項目を2つ定め、それを満たしている程度に応じて座標上に競合商品と自社商品を位置づけていきます。こうすることで他社商品にはない独自性のあることを分かりやすく表現できます。

例として、ハンバーガーのポジショニングマップを作成するとします。評価項目として縦軸に価格、横軸にヘルシーさを設定します。縦軸は上へ行くほど価格が高いことを表し、横軸は右へ行くほどヘルシーであることを意味します。

この座標上に各社のハンバーガーの特徴を当てはめ、図示していきます。例えば、A社のハンバーガーは価格は安いが野菜の量が少ないため、左下に位置づけられます。一方B社は高級志向でかつ野菜をふんだんに使っているので、右上に位置づけられるでしょう。このように図示することで、自社のハンバーガーが独自性を持つためには、この座標上で空いている位置を目指せばよいことがわかります。今の場合だと、例えばヘルシーでありかつ価格が中くらいである、横軸上に位置するようなハンバーガーを開発するとよいのだとわかります。

ポジショニングマップは差別化を目指す際の指針となるだけでなく、ユーザーに対して分かりやすく独自性を示すのにも効果的な手法です。

ユーザーの視点でポジショニングを考えることの重要性

ポジショニングマップの評価項目は、ユーザーの視点に寄り添う形で決めることが大切です。他社との比較にばかり目が向いてしまうと、自社の独自性を主張したいあまり、ユーザーが重視していないことを評価軸に設定してしまいかねません。それではいくら独自な商品を開発しても売り上げは上がらないでしょう。そうではなく、ユーザーがどのような価値を求めているのか調査した上で、適切な評価項目を設定することが、よいポジショニングマップを作るポイントです。

ポジショニングマップの応用的な活用法として、まったく新しい評価項目を設けることで市場を開拓する、というものがあります。まだ顕在していない価値観を掘り出し、評価軸にあてることで新規市場を開拓し、他社にはない独自の地位を築くことが可能です。ただし、新しい評価項目は、綿密なユーザー分析の末に見つかるものです。ユーザーがまだ意識していない価値観を分析によって発見することで、市場において優位な位置につくことができるのです。

マーケティングミックスの4P
商品・サービス(Product)

どのような価値を提供する商品を開発するのかを策定します。機能的な価値、品質やパッケージの価値、付加的な価値という3つの側面から商品のコンセプトを定め、開発へ向けて戦略を立てていきます。ユーザー分析や市場分析を踏まえ、ユーザーのニーズや市場における自社の強みを活かした商品開発を目指します。

価格(Price)

商品をいくらで売るのかを策定します。顧客が妥当と認める価格を意識しながら、利益の最大化を目指します。価格を決める要素としては、コスト、価格相場、競合の価格設定、自社のブランド力という4つが主に挙げられます。これらの要素を検討しつつ、販売価格を決定します。

流通(Place)

商品をどこでどのように売るのかを策定します。市場に流通させるための経路や販売場所を戦略的に決めていきます。流通経路を複数持つか、限定するか、また特定の販売場所に独占的な営業権を与えるかなど、商品やサービスの特性によって柔軟に流通戦略を立てることが大切です。

販売促進(Promotion)

商品の存在を顧客に知らせ、価値を伝える方法を策定します。効果的に伝えることによってニーズを生み出し、潜在顧客を掘り起こし、見込み客の獲得が狙えます。広告やCMの他、メルマガ、イベント、セールスなどの方法で商品の存在を認知してもらいます。また、ニーズを生み出すにはブログなどのオウンドメディアを用いて情報を発信していくことも重要になります。

目標設定と主な指標
SMRTゴール設定※具体的に(Specific)・測定可能な(Measurable)・達成可能な(Achievable)・目標に関連した(Relevant/Related)・Time-bound

SMARTとは、目標を設定する際に不可欠な5つの要素のことです。5つの要素とは、具体的に(Specific)、測定可能な(Measurable)、達成可能な(Achievable)、目標に関連した(Relevant/Related)、時間制約がある(Time-bound)のことで、これらの頭文字をとってSMARTと呼ばれています。それぞれの要素が意味する内容は、以下の通りです。

・Specific:具体的な言葉を用いて、目標を明確にすること
・Measurable:数字を用いて表現を定量化することで、目標の達成度合いが誰にでも分かるようにすること
・Achievable:その目標が希望や願望ではなく、現状にかんがみて達成可能なものであること
・Relevant/Related:設定した目標が自分の会社や部署の目的と関連しているかを確認すること
・Time-bound:いつまでに目標を達成するかという期限を定めること

目標を具体的にするには、5W1Hを意識した言葉を用いることが重要です。誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように、という要素がイメージできれば、目標はより具体的になるでしょう。またAchievableについては、達成可能であるとしても簡単すぎる目標ではいけません。現状を踏まえつつ、努力と改善で何とか達成できるのではないかという、ギリギリの線を突いたものがよい目標です。そのため達成可能な目標を設定するには、自社の置かれている状況やリソース、強みと弱みなどを、フレームワークを用いて正確に捉えていることが必要になります。

効果測定のためのKGI・KSF・KPI

SMARTの法則によって目標を定め後は、適切な評価を行うための指標を設定します。評価指標には以下のものがあります。

KGI 重要目標達成指標

KGIとはKey Goal Indicatorの略で、最終的に達成される目標を表す指標です。SMARTによるゴール設定で得られた目標や目指すべき数値がこれにあたります。

KSF 需要成功要因

KSFはKey Success Factorの略で、KGIを達成するための鍵となる要因のことを指します。KSFは企業の内部状況だけでなく、外部状況も考慮に入れながら正確に定める必要があります。

KPI 重要業績評価指標

KPIはKey Performance Indicatorの略で、目標の達成度を計測するための指標です。KGIの達成のために何をどれだけ行う必要があるかを、具体的な数字で示します。この数値の大小によって、目標の達成度を測ります。

KPIテンプレートをダウンロードする
手順1.KGIを設定する(SMATTゴールの法則)2.目標と現状のギャップを明確にする3.目標達成までのプロセスを検討する4.KSFを絞り込む5.KPIを設定する

KPIは大きな目標を達成するための小目標ですので、これを定めることが実務的には重要です。KPIを定める手順として、まずはSMARTを用いてKGIを設定します。次に定めた目標と分析によって分かった現状とのギャップを確認し、必要であれば目標を修正し、達成までの具体的なプロセスを検討します。その過程で何が重要な成功要因なのかを見極め、KSFを絞り込んでいきます。KSFがはっきりすれば、KPIはKSFに取り組む際の目標となる数値として設定できます。

重要なのは、KSFの要素を企業の内部状況、外部状況をしっかり分析することで適切に絞り込むことです。目標達成とは関係のない要素をKSFに加えてしまうと、KPIの目標数値を達成しても成功の実感がなくなり、社員の士気が下がってしまいます。また、KGIとKPI共に達成不可能なものや、簡単に達成できるものを選択してはいけません。現状をしっかりと分析し、適切な数値や目標を設定するようにしましょう。

ビジネスに関する指標

KSF・KPIとなり得るビジネスに関する指標を以下に挙げます。

売上高・売上原価・変動費・固定費・販売管理費・広告費・売上総利益(粗利)・利益(営業利益)

売上高
商品やサービスを提供する際対価として受け取る代金。単に売上ともいう。

売上原価
商品の仕入れやサービスの提供にかかる経費。商品・サービスが売れた際に計上される。

変動費
売上の増減によって変動する経費。原材料費や仕入原価、販売手数料などが変動費にあたる。

固定費
売上の増減によって変動しない経費。人件費や家賃、水道光熱費、減価償却費などが固定費にあたる。

販売管理費
固定費の内、販売に必要な経費。販管費ともいう。家賃や水道光熱費、人件費などが販売管理費にあたる。

広告費
固定費の内、広告宣伝のために必要な経費。広告宣伝費がこれにあたる。

売上総利益(粗利)
売上から変動費(主に売上原価)を引いた額。商品やサービスが独自であるか、魅力的であるかの指標となる。

利益(営業利益)
売上総利益から販売管理費を引いた額。本業で利益を上げる力があるかの指標となる。この額から営業外費用を引き、営業外収益を加えた数が「経常利益」となる。

ウェブサイトの指標※1行程度で

ウェブサイトの運営を行う際にKSF・KPIとなり得る指標を以下に挙げます。

ページビュー
対象のWebページにアクセスされた回数。

セッション数
ユーザーがサイトを訪れた回数。訪問数とも呼ぶ。そのサイトで一定期間行われた一連の操作が1セッションとなる。そのため複数のページビューも1セッションに含まれうる。

新規セッション率
すべてのセッションに対する、初めてサイトを訪れた人のセッションの割合。

ユーザー数
サイトを訪れた人の数。重複分は除くので、ユニークユーザー数とも呼ぶ。

新規ユーザー・リピーター
新規ユーザーとは、レポート期間内に初めてサイトを訪れたユーザーのこと。リピーターとはレポート期間以前からサイトを訪れたことがあり、レポート期間内にも訪れたユーザーのこと。

新規ユーザー率・リピーター率
新規ユーザー率は、全ユーザーに対する新規ユーザーの割合。リピーター率は、全ユーザーに対するリピーターの割合。

直帰数・直帰率
直帰数とは、訪れた1ページだけを見てそのサイトを離れた数。言い換えると、他のページへ移らずに終えたセッションの数。直帰率は、全セッションに対する直帰したセッションの割合。

離脱ページ
訪問の最後に訪れたページ。すなわちセッションの最後に閲覧されたページ。

離脱率
全ページビューに対する離脱が起こったページビューの割合。

平均ページ滞在時間
ユーザーが対象のページに滞在した平均時間

平均セッション時間
1セッションの平均的なサイト滞在時間。

ページ/セッション
1セッションにおける閲覧されたページの数。

目標の完了数
設定した目標を達成した数。

コンバージョン率
全セッションに対するコンバージョンに至ったセッションの割合。

広告に関する指標
広告に関するもので目標達成の指標となり得るものを以下に挙げます。

インプレッション数
広告が表示された回数。複数の広告が1ページにある場合、ページビューの数よりインプレッション数が上回る場合がある。

ユニークユーザー数
広告が表示されたユーザーの数。複数の広告が表示されたとしても、ユニークユーザーは1として数えられる。

リーチ数
広告にたどり着いたユーザーの数。ユニークユーザーの数と同一になる。

クリック数
広告がクリックされた数。普通セッション単位で計測される。

広告費用
広告にかかった費用。インターネット広告においては、クリックに応じてかかるクリック課金、表示に応じてかかるインプレッション課金などがある。

CPM
Cost Per Milleの略で、1000回の広告表示にかかるコストのこと。広告掲載料金の単位として使われる。

クリック率
全インプレッションに対するクリックされた回数の割合。CTR(Click Through Rate)とも呼ばれる

クリック単価
クリック一回あたりの平均広告費。「CPC(Cost Per Click)」とも呼ばれる。

顧客獲得単価
商品購入や会員登録など、コンバージョンを1件得るためにかかるコスト。CPA(Cost Per Action)とも呼ばれる。

ROAS
Return On Advertising Spendの略で、広告費用に対する広告系有で上げた売上の割合。売上高÷広告費用×100で求められる。

ROI
Return On Investmentの略で、投資金額に対する利益の割合。投資利益率と日本語では呼ばれる。

SNSに関する指標

SNSに関するもので目標達成の指標となり得るものを以下に挙げます。

フォロワー数
SNSのアカウントをフォローしているユーザーの数。

リーチ数
SNSの投稿やアカウントを見たユーザーの数。

インプレッション数
SNSの投稿がユーザーの画面に表示された回数。

クリック数
SNSの記事やアカウントに掲載したリンク・広告などがクリックされた回数。

いいね!数
「いいね!」ボタンやリンクがクリックされた回数。

シェア数
記事がSNSでシェアされた数。シェアされた先でのリーチ数やいいね!数なども計測することができる。

エンゲージメント数
記事のシェアやいいね!など、SNS上でユーザーがアクションを起こした回数。

エンゲージメント率
インプレッション数もしくはリーチ数に対する、エンゲージメント数の割合。Twitterではインプレッション数、Facebookではリーチ数が母数となる。

総再生時間
動画サイトにおいて1つのチャンネル内の動画すべて、もしくは1つの動画がユーザーによって再生された時間の合計。

表示回数
視聴者の画面に動画のサムネイルが表示された回数。

平均試聴じかん
1回の動画視聴あたりの平均的な視聴時間の長さ。

チャンネル登録者
チャンネルに登録しているユーザーの数。

リード獲得活動に関する指標

リード獲得、顧客獲得活動に関するもので、目標達成の指標となり得るものを以下に挙げます。

コンバージョン率・受注率・商談率
コンバージョン率は、全セッション数に対するコンバージョンに至ったセッションの割合。商談率は、コンバージョンから商談に至ったもの割合。受注率は、商談から受注に至ったものの割合。3つの率を参照して、コンバージョンからどれだけの成果につなげられているかを確認する。

電話・FAX・郵送での問い合わせ数
オフラインでの問い合わせの数。どの方法が成果を残しているのかチェックする。

CPC・CPA
CPCはクリック単価、CPAは顧客獲得単価。これらのコストと受注率を比較し、費用対効果を測定する。

ホワイトペーパーダウンロード数
ホワイトペーパーがダウンロードされた回数。この回数と商談率や受注率を参照し、見込み客獲得のための施策が効果を及ぼしていたのかを評価する。

メールアドレス取得数
会員登録、メルマガ登録などでメールアドレスを取得した数。この数と商談率や受注率を参照し、メールでの施策が機能していたかどうかを評価する。

顧客数
獲得した顧客の数。上記の指標を用いつつ、それぞれの施策がどれだけ効果的に顧客を獲得し売上を上げたかを評価し、優先順位を決める。

主なマーケティングツール
MA・・・マーケティングオートメーション

マーケティングオートメーションは、マーケティング活動を自動化することで見込み客の獲得を効率良く行うためのツールです。主な機能としては、顧客情報の収集とリスト化、見込み客のスコアリング、メール配信、営業担当へのアラート、レポーティングなどがあります。特徴的なのは、見込み客が自社の商品やサービスについてどのくらい興味を抱いているかについて分析し、自動的にスコアリングしてくれるという点です。これによって一人ひとりに最適なコミュニケーションを行い、営業活動を効率化することができます。

CRM・・・カスタマーリレーションシップ

カスタマーリレーションシップマネージメントは、顧客との長期的かつ良好な関係を築くためのツールです。年齢や性別、購入履歴、アクセス履歴、アンケートで得た個人情報などを分析することで、顧客一人ひとりの興味や行動パターンをとらえ、ニーズに合った情報やサービスを提供します。画一的なアプローチではなく、個々の顧客目線に立ちながら関係構築ができるという点が特徴で、より効果的なインバウンドマーケティングを可能にするツールです。

SFA・・・セールスフォースオートメーション

セールスフォースオートメーションは、営業活動をサポートするためのツールです。顧客情報や過去の営業活動、次の行動スケジュールなど、営業に関わる情報をデータベース化することで、ノウハウの蓄積と共有を行います。業務の引き継ぎもデータベースを参照して簡単に行えるため、効率的な顧客対応が可能になります。

ABM・・・アカウントベースドマーケティング

アカウントベースドマーケティングは、企業(アカウント)をターゲットとしたマーケティングをサポートするツールです。ターゲットとなるアカウントに優先順位をつけて評価し、それぞれに最適なアプローチを行うことで、マーケティング業務の効率化とリソースの節約に寄与します。また、アカウント情報が一括管理されるため、営業と連携してスムーズに業務を行うことも可能になります。

マーケティング関連の法律
不正アクセス行為の禁止に関する法律(不正アクセス禁止法)

不正アクセス禁止法は、アクセス権限のないコンピューターを勝手に操作したり、ネットワークに侵入したりする行為を取り締まる法律です。実際に他人のコンピューターに侵入する行為の他、他人のIDやパスワードを不正に取得し保管する行為や、フィッシング行為なども罰則の対象となります。また、アクセス管理者の努力義務としては、IDやパスワードを厳重に保管し、セキュリティ対策を講じることが定められています。ASPの管理画面を操作する際などはこの法律に基づき、管理者のアクセス許可を得ることが大切です。

個人情報保護に関する法律(個人情報保護法)

個人情報保護法は、プライバシー権など個人の人権が侵害されないよう、その有用性に配慮しつつ、個人情報の取り扱いに関して守るべき義務などを定めた法律です。個人情報の利用目的をできるだけ限定的にし、第三者へ無断で提供する行為を禁じています。また個人情報の管理を適切に行い、事業にとって必要のない個人情報は速やかに破棄すべきなどの義務を定めています。なお、この法律における個人情報は氏名や年齢、住所、電話番号などの情報だけでなく、メールアドレスや購買履歴なども含まれるので注意が必要です。

不正競争防止法

不正競争防止法は、正当な営業行為と公正な競争を確保するための法律です。すでにある商品・サービスの模倣品やよく似た商品を販売する行為、営業秘密を盗んだり悪用したりする行為、競争相手の信用を貶める事実を流布する行為などが罰則の対象となります。また、競争相手のサイトと類似しているドメインを使用することも、法律違反として取り締まられる可能性があります。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)

薬機法はかつて薬事法と呼ばれていた法律で、医薬品等の有効性や安全性を確保するための法律です。医薬品や医薬部外品、医療機器、化粧品について、取り扱う際に許可が必要であることや、誇大な広告を禁止し、承認を受けた範囲を超える効能を表示してはいけない、などの規制が定められています。注意したいのは健康食品やサプリメントで、これらは食品に分類され薬機法の対象ではないため、効果や効能を表示することで処罰の対象となるおそれがあります。

知的財産権類

知的財産とは、人間の知的創造活動によって生まれたアイディアや創作物などのことです。知的財産基本法では、知的財産が発明者の財産として一定期間保護されるべきであると定めています。知的財産を独占する権利が知的財産権であり、知的財産権の代表的なものが著作権です。著作権法は絵画や文章、画像、動画、音楽などの著作物について、著作権者に生じる様々な権利を保護しています。また、知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権は産業財産権と呼ばれ、これらの権利は特許庁の管轄となっています。

景品表示法

景品表示法は、誤解を招くような誇大広告や、支払った金額に対して過大な景品を提供することを禁じる法律です。合理的な判断を阻害するような行為を禁じることで、消費者の利益を守ることが目的です。商品・サービスの内容や品質を実際以上によく見せるような広告は規制の対象となります。また、懸賞の賞品や粗品などについては、取引価格に対して景品の最高額が厳密に定められており、これを超える高額な景品を用意した場合罰則の対象となります。

特定商取引法

特定商取引法は、訪問販売や通信販売、電話勧誘販売など、消費者トラブルが起こりやすい取引形態7種を対象とし、遵守すべきルールや消費者を守るためのルールを定めた法律です。各取引形態における禁止行為を細かく指定し、悪質な取引によって消費者が不利益を被らないようクーリングオフなどの制度を定めています。また、ネットショップなど通信販売事業者には送料や代金の支払い方法、引き渡し時期、事業者の住所と氏名、連絡先など情報を表示する義務が定められており、これに違反した場合処罰の対象となる可能性があります。

マーケティングを理解するために欠かせない用語集